大久保研究室
埼玉大学
工学部情報工学科/
大学院理工学研究科
お知らせ
- 2024.04.01 メンバ更新
- 2023.03.22 学生の受賞: M2の山本陸さんが IEEE Computational Intelligence Society Japan Chapter Young Researcher Award (IEICE Neurocomputing) を受賞しました。この賞は2022年3月から2023年1月までに開催された電子情報通信学会ニューロコンピューティング研究会における該当発表者(優秀であると認められた35歳以下の若手研究者)に贈呈されるものです。(参考URL)
- 2021.11.29 大久保の研究がJST創発的研究支援事業に採択されました(採択率は11%でした)。2022年4月から実施します。長期に渡って支援を得られるので、双対に関する計算原理を使える形にまで持っていくことを目指します。
研究室紹介
※ 主に研究室配属を検討している学生向けです。
はじめに
本研究室では確率・統計を基礎として『新しい情報処理の形』を目指す研究をしています。
研究の軸は「計算・情報処理に使える新しい数理的な手法を探すこと」。少し数式の使い方を工夫することで短時間で処理できるようになれば、省エネルギーで地球環境にも優しい技術につながりますよね。
『計算』や『情報処理』という枠組みについて考え直しながら、新しい技術につながる『数理の種』を見つける活動をする、そんな研究室です。
少し先の未来を見据えた技術を
そういった数理の種を探すことは大変です。何より、地味です。基礎的ですし、それほど華々しいわけでもありません。「使える技術」につながる種を探す必要もあります。そんな難しい研究に挑戦することになります。
今の時代、研究を世の中にすぐに活かせる形にまとめることも大切ですし、大企業による「大規模に、高性能に」を目指す研究開発のほうが生活を大きく変えてくれはします。ただ、もう少し先の未来を見据えた技術を考えること、そのために必要な地道な研究を進めることも大切です。世の中の全員がこういった研究に取り組むと社会が成り立たなくなってしまいますけれども……大学には根本的に新しいことを模索する役割も期待されていますので、地味だし誰もが注目する部分ではないけれどうまくいけば大きく育ちそう、そんな研究に挑戦する場所でありたいものです。
本研究室では、特に数理の側面で、こういった地道な研究を進めようとしています。もちろん全く使えないものを研究するのではなく、既存の研究の数理を見直したり工夫したりしながら、少し先の未来に役立つ種になりそうなものを探し続ける、という意識が大切です。
そのためには既存の色々なことを知っておく必要があります。また、「ただ単に使えればいい」というよりは「理解をしたうえで使える」ことも大切です。理解のために、工学的な視点だけではなく、理学的な視点も必要となります。さらに、使えそうな数理の種を見つけたら「使える形にするための努力」もします。応用のためにはどのような枠組みが必要なのか、周辺のことを考える必要もあります。数理を応用するという研究は、数理の勉強も少し大変、しっかりと理解も進める、そして応用のための幅広い視野も必要、ということでなかなか大変で、しかも数理なので見た目の華々しさはあまりない……でも、このような地味な研究の大切さを信じたいところです。そして、こういった基礎的なところをしっかりと身につけた人のほうが、社会で活躍できる場面も多くなるはずです。
重点課題:『双対』に基づく新しい計算技術の開発
大久保研究室では『双対過程』という数理の種を見つけ、育ててきました。そして、ようやくこれを実際の計算に使える道筋が見えてきました。この枠組みを使うと、これまでよりも数十倍、場合によっては百倍ほど高速に「予測」や「制御」をできるようになります。
ポイントは『方程式とデータをつなぐ』ことです。機械学習の進展によりデータを活かすことはできるようになりました。そのため、データだけに頼る形になりつつあります。大量のデータがすべて、という時代です。一方、もともと現象をうまく捉えるために、物理や工学において方程式が用いられてきました。現象の振る舞いを方程式で記述することで、シミュレーションできます。その意味で、「方程式は最高の圧縮技術」とも言えます。もしこの両者をうまくつなぐことができれば、どんな世界が広がるでしょうか? 『データ同化』と呼ばれる技術や、現実世界と仮想世界とをつなぐ『デジタルツイン』など、情報を活用する世界を広げるための研究が進められています。本研究室には、特に双対過程を用いたアプローチに独自技術があります。この技術が、方程式の知見をKoopman作用素や拡張動的モード分解と呼ばれるデータ駆動のアプローチとの融合の鍵となります。方程式とデータとを融合させ、新しいアプローチでデジタルツインの世界を切り開く。そのための基礎理論、基礎技術の開発に取り組んでいます。
そんな新しい技術に挑戦するために必要なのは、意外にも線形代数です。ただ、関数空間を考えて、そこでの線形性を使います。また、計算量爆発を起こさないように離散数学的な、つまり組合せ論的な技術も使います。データとの接続を考える際にはもちろん確率や統計の話も出てきますし、量子コンピュータで用いられる技術も視野に入れて……と非常に幅広いです。今はようやく芽吹いた数理の種を「使えるもの」にするために、実際にコードを書いて検証をしつつ、基礎理論の部分もさらに発展をさせるとうフェーズです。とにかくやることは山積み。何かの技術を改良するのではなく、本当に誰も挑戦していない領域への挑戦をしているので、使えるものを色々なところから探しつつ、手探りで暗闇の中を歩いている状況です。
これまで誰も工学的な応用を考えもしなかった『双対過程』に着目して、鍵となる理論を発展させ、そして具体的な計算アルゴリズムを考案したからこそ取り組める研究課題。そんな挑戦的な研究テーマに取り組める経験は、貴重です。この新しい技術を、理論面と、開発面の両面から取り組み、本気で形にしたいと考えています。一緒に議論をしながら、主体的に新しいアイデアを出して挑戦してくれる学生さんを待っています。
当面の研究課題
重点研究課題は、これです。
- 双対・随伴に基づく新計算原理の研究(時系列解析や制御系への応用)
他に、以下のような項目も重点的に研究しています。
- 最適化に用いられる専用ハードウェア(量子アニーリングなど)のためのイジング形式に関する研究
- 時間発展を利用した情報処理に関する基礎的な研究(ODE Network や Spiking neural network など)
研究室選びのための情報
以下は、研究室を選ぶ際の参考のための情報です。まず、こんな活動指針を意識しています。
- [新しい数理を意識した研究をする]
新しい、と言ってもちょっとした改良だけだったりもします。それで大丈夫ですが、この研究は数理的にはどうか、という問をときどき自分に投げかけてみましょう。もちろん、数理がない研究が駄目ということではありません。世の中の全ての研究が数理に着目する必要はないですし、むしろ、数理にこだわる研究は多くなくてもいいかもしれません。多様性こそが大切です。でも、独自性を目指すためにこんな軸を設定して、毎日の研究活動のなかで意識してみることにしました。 - [未来に優しい研究をする]
未来に優しい、とはなんとも漠然としていますが、これは個人個人でそこを問い続ける意識を持って欲しいからです。省エネルギーなどで持続可能な世界に貢献することでしょうか? 個人情報保護のためにデータを一つに集めすぎないようにすることでしょうか? 「大量の計算機を使えばできる」というのは、まあ、優しくはなさそうですよね。解決のための数理的な工夫を探しましょう。そして、未来に優しいかどうかを考えることは、自分の研究の位置付けをときどき振り返ることにもつながります。 - [人類にとっては小さな一歩でも、その一歩こそが大切だと信じる]
月に降り立つことは人類にとって大きな一歩でしたが、日常の研究は小さな一歩です。本当に、小さいです……。こんなことしかできないのか……と思ってしまうこともあるかもしれません。でも、誰かがほんの少しでも進まないと先に進みません。1日1歩でも365日あれば少しは進みますし、例えば100人が研究をすれば、そのなかの1人の1歩が大きなものになっているかもしれません(1000人に1人かも?)。自分の毎日の取り組みが大切なんだ、と意識して、積極的に、自発的に、ちょっとずつでもいいので進みましょう。
基本的には確率を使った新しい情報処理をしたい人向きの研究室です。線形代数、微積分、確率・統計などの基礎を踏まえた上で、確率微分方程式、統計物理学、非平衡系物理学など、様々な分野の数理的手法を利用します。ただし、数学的に厳密な証明を目指すよりは、使える技術につなげることに焦点を置いています。そのためにコードを書く作業も必須となります(教員が使っているのは主にC言語とPython)。
教員および研究室の研究の詳細については、教員個人の業績のページ [→ リンク先へ]に掲載されている論文などをご参照ください。
※ 現在、大久保研究室では「深層学習などの機械学習を応用する」研究を実施していません(研究の道具として深層学習を使うことはあります)。機械学習の技術を利用する研究は様々な分野で行われつつあります。これらに興味のある人は他の研究室をご検討ください。
研究室のメンバー
- 大久保 潤 (教授) [→ 個人ページへ]
- 金城 佳世 (助教)
- (D) 挾間 優佳, 櫻井 大和
- (M2) 小柳 尚太, 濱 晴矢
- (M1) 太田 一郎, 岸本 龍弥, 直井 達也, 福士 鶴太郎, 本間 輝
- (B4) 木村 郁斗, 國谷 碧, 佐野 徹平, 中村 颯太
教員
学生
アクセス
研究室: 総合研究棟1号館702
教員居室: 総合研究棟1号館708
郵便: 〒338-8570
さいたま市桜区下大久保255
埼玉大学 工学部情報工学科
大久保潤 宛