大久保研究室

埼玉大学
工学部情報工学科/
大学院理工学研究科

計算は、影のような存在かもしれない。必要な時に、そっと結果が手に入っていればいい。意識せずに現れて、そして消えていくもの。

計算を、賢くやりたい。できれば地球に優しく、効率的なやりかたで。できれば分散的に、コンパクトなやりかたで。ノイズの多い世界でも動く、確率的なやりかたで。知能の謎にも迫れるような、数理的なやりかたで。

地味だけれど、世界に欠かせない計算の技術を提供する。まだ、世界になかったやりかたで。

お知らせ

研究室紹介

※ 研究室配属を検討している学生向けです。

はじめに

 本研究室では確率・統計を基礎として『新しい情報処理の形』を目指す研究をしています。
 データを扱う機械学習からロボットの制御系など幅広く対象としていますが、研究の軸は「計算・情報処理に使える新しい数理的な手法を探すこと」。少し数式の使い方を工夫することで短時間で処理できるようになれば、省エネルギーで地球環境にも優しい技術につながりますよね。
 『計算』や『情報処理』という枠組みについて考え直しながら、新しい技術につながる『数理の種』を見つける活動をする、そんな研究室です。

少し先の未来を見据えた技術を

 そういった数理の種を探すことは大変です。何より、地味です。基礎的ですし、それほど華々しいわけでもありません。「使える技術」につながる種を探す必要もあります。そんな難しい研究に挑戦することになります。
 今の時代、研究を世の中にすぐに活かせる形にまとめることも大切ですし、大企業による「大規模に、高性能に」を目指す研究開発のほうが生活を大きく変えてくれはします。ただ、もう少し先の未来を見据えた技術を考えること、そのために必要な地道な研究を進めることも大切です。世の中の全員がこういった研究に取り組むと社会が成り立たなくなってしまいますけれども……大学には根本的に新しいことを模索する役割も期待されていますので、地味だし誰もが注目する部分ではないけれどうまくいけば大きく育ちそう、そんな研究に挑戦する場所でありたいものです。
 本研究室では、特に数理の側面で、こういった地道な研究を進めようとしています。もちろん全く使えないものを研究するのではなく、既存の研究の数理を見直したり工夫したりしながら、少し先の未来に役立つ種になりそうなものを探し続ける、という意識が大切です。
 そのためには既存の色々なことを知っておく必要があります。また、「ただ単に使えればいい」というよりは「理解をしたうえで使える」ことも大切です。理解のために、工学的な視点だけではなく、理学的な視点も必要となります。さらに、使えそうな数理の種を見つけたら「使える形にするための努力」もします。応用のためにはどのような枠組みが必要なのか、周辺のことを考える必要もあります。数理を応用するという研究は、数理の勉強も少し大変、しっかりと理解も進める、そして応用のための幅広い視野も必要、ということでなかなか大変で、しかも数理なので見た目の華々しさはあまりない……でも、このような地味な研究の大切さを信じたいところです。そして、こういった基礎的なところをしっかりと身につけた人のほうが、社会で活躍できる場面も多くなるはずです。

重点課題:『双対』に基づく新しい計算技術の開発

 大久保研究室では『双対過程』という数理の種を見つけ、育ててきました。『双対』という数理を軸にして、データと方程式とをつなぐ新しい枠組みです。そして、ようやくこれを実際の計算に使える道筋が見えてきました。この枠組みを使うと、これまでよりも数十倍、場合によっては百倍ほど高速に「予測」や「制御」をできるようになります。また、例えばデータを用いて機械学習をする前に、まずは方程式を使ってざっくりと学習をおこない、少量のデータで追加的に学習をするようなことも可能になります。
 そんな新しい技術に挑戦するために必要なのは、意外にも線形代数です。ただ、関数空間を考えて、そこでの線形性を使います。また、計算量爆発を起こさないように離散数学的な、つまり組み合わせ論的な技術も使います。データとの接続を考える際にはもちろん確率や統計の話も出てきますし、量子コンピュータで用いられる技術も視野に入れて……と非常に幅広いです。今はようやく芽吹いた数理の種を「使えるもの」にするために、実際にコードを書いて検証をしつつ、基礎理論の部分もさらに発展をさせるとうフェーズです。とにかくやることは山積み。何かの技術を改良するのではなく、本当に誰も挑戦していない領域への挑戦をしているので、使えるものを色々なところから探しつつ、手探りで暗闇の中を歩いている状況です。
 これまで誰も工学的な応用を考えもしなかった『双対過程』に着目して、鍵となる理論を発展させ、そして具体的な計算アルゴリズムを考案したからこそ取り組める研究課題。そんな挑戦的な研究テーマに取り組める経験は、貴重です。この新しい技術を、理論面と、開発面の両面から取り組み、本気で形にしたいと考えています。一緒に議論をしながら、主体的に新しいアイデアを出して挑戦してくれる学生さんを待っています。

当面の研究課題

重点研究課題は、これです。

他に、以下のような項目も重点的に研究しています。

研究室選びのための情報

以下は、研究室を選ぶ際の参考のための情報です。まず、こんな活動指針を意識しています。

 確率・統計関係の研究となると、人工知能やビッグデータの話になってしまいがちです。今ある技術をどう利活用するか、ということも大切ですが、こういった研究は競争も激しく、流されがちになります。
 成功するかどうかもわからないアプローチを人知れず試してみること、たくさん試した中でひとつくらいは未来の種になりそうなものを見つけること。よくわからないけれど良い性能を発揮するものも実用上は大切ですが、少しずつでも理解を深めながら、その理解の果実を使える形に結実させること。こんな「流されず、静かに、理解を深める文化」が、世界の片隅にあってもいいですよね。誰かの作った土俵で勝負をするのではなく、こんなこと成功しそうにないかも……ということを見つけて、失敗続きでも、いつか自分で大きな土俵を作れる、そんな研究を目指したいものです。
 目指すのはよいのですが、これはとても大変なことです。こういうものを作れればいい、という見通しがあれば少し気が楽ですが、どんな数理的な工夫をできるか、どんな新しい数理を使えそうか、を探すのは一筋縄ではいきません。個人で勉強を進め、教員と議論をしながら、研究室の他の人からの意見も受け止めて、頑張って進めるしかありません。数理的な研究には向き不向きもありますし、コードを書く研究が主体になる学生もいます(それはそれで大切です)。ただ、理系の学生全員がこうあるべき、ということではないですが、数理的な視点を身につけた人が社会から必要とされているのも事実。本研究室に所属した人には数理に慣れ親しんで欲しいと考えていますし、そのような志をもった人に研究室に来て欲しいと期待しています。
 また、研究室には各種書籍(専門書だけではなく、デザイン思考関係の書籍や、さらには想像力を羽ばたかせるため(?)のSF小説なども!)が揃っていますので、これらを気の向くままに読むことなどを通じて、自主的に幅広い視野をもってもらうことも期待しています。

教員(大久保)の研究の特徴は?

 確率・統計を軸にして『数理的な概念を、工学的に使える形にもっていくこと』に興味があります。数学の研究ではなくて、応用への橋渡し的な研究がメインです。実際に工学的に応用できる数理的な概念を見つけることはなかなか難しくて、「いけるかも」と思っても「駄目だった……」ということの繰り返しです。ただ、大久保は数学者ではないのですが数学が好きで、応用志向もそれなりにあって、そういうタイプだからこそできる研究があるのかな、と思っています。
 色々なことに興味があり、研究をしてきましたが、『双対過程の数理』の研究がようやく芽を出しつつあります。上述したように、とにかく色々な分野が関係するテーマです。理論の面でも関数空間の話や組み合わせ論など面白く、実装の面でも高速な処理につながるアルゴリズムの発見など、今が非常に面白い段階です。さらにこの技術の先に、もっと大きな目標も見据えているのですが……そこまで早く辿り着きたいものです。
 なお、世界の研究室で同じアプローチをしているところは(私が知る限りでは)ありません。細かい話なのですが、ポイントは変数ではなく観測量、統計量に着目して計算をするという点にあります。これが関数空間で計算をおこなうことに対応するのですが、この計算がなかなか大変です。データだけに着目してこの計算をする研究は、2010年くらいから盛んになっています。一方で、『双対過程』を利用したアプローチでは方程式に着目します。方程式側からのアプローチだと実際の計算が難しく、これまで研究されていなかったのですが、『双対過程』の数理とプラスアルファの計算技術で、ようやく実行可能になってきた、というのが現状です。この数理を見つけて技術を開発してきたというのが独自性で、フィルタリング、状態推定、確率制御など、実際の応用にも結びつつあります。でも、まだまだやるべきことが山積みです(ということで、ぜひとも、一緒に挑戦しましょう)。
 『双対過程』だけではなく、こういった「数理の種」を見つけ出して応用に結びつけることは大学ならではの研究であり、また大きな技術革新のために必要とされていると大久保は信じています。簡単に「数理の種」を見つけることはできませんが、この手の研究については大久保にはいくつかの経験がありますので、一緒に「数理の種」を探したい方も募集中です。研究室独自の「数理の種」を育てつつ、研究の経験やプログラミングの経験を積んでみたいという方、ぜひ研究室にお越しください。

 詳しくは、教員個人の業績のページ [→ リンク先へ]などをご参照ください。

研究室のメンバー

アクセス

研究室: 総合研究棟1号館702
教員居室: 総合研究棟1号館708

郵便: 〒338-8570
   さいたま市桜区下大久保255
   埼玉大学 工学部情報工学科
   大久保潤 宛

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